Coral CapitalではSaaSからマーケットプレイス、宇宙ロボットや核融合まで幅広いカテゴリーに投資しています。優れたスタートアップ機会はベンチャーキャピタリストではなく起業家から生み出されるものであることを念頭に、どのアーリーステージ投資案件に対してもVCとしての初心を忘れず謙虚に向き合うよう心がけています。
そんなCoralですが、実は「Web3」系のスタートアップにはまだ投資したことがありません(投資先の中ではG.U. Technologiesが近いですが、どちらかというとブロックチェーンインフラ企業ですので除外しました)。決して興味がないわけではありません。例えばチームメンバーの中でも、私やKenは以前からビットコインのHODLer(長期保有者)です。私の場合、買ったビットコインは本当に一度も売ったことがありません。世界的な金融緩和に対して個人的に非常に危機感を抱いているため、それに対する長期ヘッジとして活用しているのです。気になる方は、ぜひRay Dalio著の「Principles for Dealing with the Changing World Order: Why Nations Succeed and Fail」を読んでみてください。
少なくともチームのうち2人がすでにクリプトに長いこと投資しているわけで、当然チームとしても興味を持っています。社内でもWeb3勉強会を開催してLayer1/2の技術動向やNFTの応用を論じたりもしています。ただ、Coralではスタートアップへの投資を検討する際に以下の2つの基本的なポイントを確認しているのですが、説得力のある答えを出せるWeb3系スタートアップが見つかっていないというのが正直なところです。
①どのような実在するペインポイントを解決しようとしているのか。
②そのソリューションが本質的な解決になるか。
これらの問いは業界を問わず、どのスタートアップを考える上でも重要です。それはSaaS企業であっても、核融合企業であっても変わらず、Web3企業に対しても私たちは同じ質問をします。業界を超えて通用する、根本的な判断基準なのです。
このように内情を告白してしまうことによって、今後Web3系の起業家を遠ざけてしまう可能性があることは十分承知しています。これまで見てきたWeb3案件のほぼ全てが、「まだ見つかっていない問題に対するソリューション」や、「実在する問題に対する説得力の乏しいソリューション」ばかりだったと言っているようなものですから。しかし、炎上を覚悟であえて続けますが、「それを非中央集権型にすることが、本当により優れたソリューションにつながるのか」という疑問が実際によく投資判断のポイントとして上がってきます。プロダクト・マーケット・フィットが見えているかどうかは必ずしも投資の必須条件ではありません。しかし、これまでに1社たりとも具体的なプロダクト・マーケット・フィットを示せるWeb 3系スタートアップに出会えていないというのは、業界全体の傾向として示唆的です。
クリプトには投資機会があって、実際に儲かっている人たちもいます。それは間違いありません。ただし、Coralでは短期的なリターンのみを追求する投資機会を求めていません。率直に言って、これまでのクリプトの世界というのは、まさにそうしたものだったのではないでしょうか。Coralの方向性としては、将来的に何十年にもわたって日本や世界経済を引っ張っていくような永続的な企業やプロジェクトの支援を目指しています。
とはいえ、これはWeb3に限ったことではなく、どの業界でもほとんどのスタートアップがプロダクト・マーケット・フィットを見つけられずに終わります。過去のITバブルでも、短期で売り抜けるようなスキームも含め、玉石混合の多くの機会で溢れかえりました。その中で最終的にはAmazonやGoogleなどの数少ない「玉」が勝ち残ったというのはご存知の通りです。長期的には、クリプト界でもいずれ「玉」が出てくると私たちも信じています。そして今後の世界的な価値創造の波に乗り遅れないよう、日本でもクリプト業界の規制緩和が進むことを期待しています。
有望なクリプト系スタートアップを見逃さないよう、Coralは今後も業界を注視し続けます。いずれにしても、クリプトであろうとなかろうと、スタートアップの成功法則は共通です。人に求められるものを作りましょう。
まさにそのような企業を作っているという起業家がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください。
Founding Partner & CEO @ Coral Capital