SaaS向けカスタマーサクセス管理ツールを提供するHiCustomer株式会社が12月16日、IT製品導入に関与する人への調査をまとめた「カスタマーサクセス白書 for 営業」を公開しました。
それによれば、IT製品のオンライン営業を受けた人の半数は、対面営業を望んでいることが明らかになりました。また、2回目以降の商談を断る理由としては、「セールス担当者のスキル不足」が4割近くを占めることもわかりました。
調査は11月18〜28日にインターネットで実施し、SaaSをはじめとするIT製品の導入に関与している459人から回答を集めました。IT製品の買い手の購買行動を深掘りする白書の中から、SaaSのセールス担当者が知っておくと良さそうな7個の項目を紹介します。
※情報開示:HiCustomerはCoral Capitalの出資先企業です。
(1)2023年のIT投資予算は、半数以上の企業で増額の見込み
2023年のIT投資予算について尋ねたところ、「増額する見込み」と回答したのは50.3%でした。その一方、「減額する見込み」と答えた人は5.0%にとどまりました。
「増額する見込み」と答えた人の増加割合としては、「10〜19%」が41.6%で最も多く、次いで「20−29%」が26.0%となり、企業のIT投資に対する積極的な姿勢が伺えました。
(2)オンライン営業を受けた人の半数は「対面営業」を望んでいた
コロナ禍で急速に広まったオンライン商談ですが、調査対象者459人のうち、ZoomやTeams、Google Meetといったオンライン会議ツールで営業を受けた経験がある人は70.8%に上りました。
つづけて、オンライン会議ツールで営業を受けた経験がある人に対して、対面とオンラインのどちらの営業が望ましいかを尋ねたところ、50.7%が「対面が良い」と回答していることがわかりました。
ただし、対面での営業を望む人の割合は、業種ごとにばらつきが見られました。例えば「飲食店・宿泊業」や「卸売・小売業」は対面を望む人が7割程度でしたが、ITツールを使うことが多い「情報サービス業」や「広告業」では対面を望む人は3割を下回っています。
(3)2回目以降の商談を断る理由の約4割は「営業担当のスキル不足」
IT製品の営業担当者にとって耳が痛くなりそうな質問が、「2回目以降の商談に進まない理由」です。
その内訳を見てみると、上位2位は「機能要件が合致しない」(25.4%)や「予算感が合わない」(16.7%)など製品自体に関する理由がランクインしています。
その一方で、「担当営業の製品理解度が低い」(13.7%)や「担当営業のヒアリング能力が低い」(13.3%)、「担当営業の対人関係構築スキルが低い」(10.3%)など、営業スキルに依存するものが全体の37.3%を占めることがわかりました。
(4)本命製品を決めるタイミングは「2回目の面談後」
「本命」として検討するIT製品は、どんなタイミングで決めているのでしょうか。この質問への回答では「営業との2回目の面談後」が29.4%でトップでした。
ただし、情報サービス業では「営業と初めて面談する前の調査段階」 で本命を決めているケースが多く、全体の2.3倍の23.6%でした。
(5)IT製品を知るきっかけは「ネット検索」、役職が高くなるほど「人づて」も
導入検討を行ったIT製品を知ったきっかけで最も多かったのは、「インターネット検索」で25.8%。「SNS」(2.0%)や「インターネット広告」(7.9%)を合わせると、35.7%がインターネット経由でした。
ただし、検討対象となるIT製品との出会いのきっかけを役職別に見てみると、様相が異なってきます。一般社員は「インターネット検索」が35.2%と最多でしたが、役職が高くなるにつれて、人づて(知り合い/付き合いのあるIT販売代理店)でIT製品と出会う割合が高いことがわかりました。
(6)稟議で求められる年間リターンは「200〜299%」が最多
IT製品の稟議にあたって上席から求められる年間リターンでは、「200−299%」が33.3%で最も多く、「100〜199%」が28.6%と僅差で続きました。
ただし、IT製品の年間支払い金額別に上席から求められる年間リターンを見てみると、年間支払額が100万円以下の製品では「稟議において費用対効果の説明が必要な場面はない」という回答が32.0%で最も多い結果となりました。
(7)契約後の後悔:社内での活用定着に課題
IT製品導入後に後悔した経験がある人は43.3%と半数近くに上りました。その理由としては「使いにくいと感じる要素があった」が32.3%、次いで「社内メンバーが想定より使ってくれなかった」 が21.3%。と、社内での活用定着に関する課題が多く挙げられました。
さらに、2回目以降のIT製品導入時に重視するようになった項目では、「サポート体制の充実度」(22.2%)と「現場の運用負荷の大きさ」(15.9%)がトップ2にランクイン。2回目以降のIT製品導入時には、サポート体制や運用負荷など実運用のスムーズさに関わる項目が重視される傾向が見られました。
「カスタマーサクセス白書 for Sales」では今回紹介した7つの項目以外にも、オンラインでの購買検討の難しさや、IT製品の選定プロセスなど、買い手側の購買行動を深堀りしています。全54ページのPDFはこちらから無料でダウンロードできます。
このほかHiCustomerでは、SaaS導入企業の成功体験づくりを支援するカスタマーサクセスの現状をとりまとめた「カスタマーサクセス白書」を2020年から毎年出しています。Coral Insightsでは2022年版と2020年版の見どころを紹介していますので、興味のある方はご覧ください。
関連記事(2022年版):SaaS導入の障壁は「ベンダー対応」よりも「社内調整」、最新の「カスタマーサクセス白書」でわかること
関連記事(2020年版):日本で投資広がる「カスタマーサクセス」の今がわかる7つのデータ
【告知】
「カスタマーサクセス白書 for 営業」を公開したHiCustomerも参加する、日本最大のスタートアップキャリアフェア「Startup Aquarium」が2月18日(土)に開催されます。
イベントにはHiCustomerのほかCoralが投資する50社以上のスタートアップが参加し、自社の魅力を伝えるピッチを披露します。展示ブースでは各社の取り組みを直接聞くことも可能です。
スタートアップでカスタマーサクセスや営業として働くことに興味がある方はもちろん、中長期的なキャリアを考えるきっかけになるイベントになるはずです。お得な前売りチケットを販売中ですので、ぜひご参加ください。
Editorial Team / 編集部