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会社のステージ別の最適な従業員数

本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」のMBA Mondaysというシリーズの投稿を翻訳したものです。今回は先週ご紹介した、人材に関するシリーズの第1弾「カルチャーフィットとは」、第2弾「優秀な人材を見つける方法」に続く第3弾「会社のステージ別の最適な従業員数(Optimal Headcount At Various Stages)」ついてご紹介します。


あなたが会社で雇っている従業員の数は、会社作りのプロセスを正しく踏む上で、どんな時においても非常に重要なポイントとなります。多過ぎると仕事の進捗が遅くなる上に、バーンレートが必要以上に上がり、実際の利益を何も生まないまま経営上の間接諸経費の増加を招きます。少な過ぎると人的リソースは制限され、会社はあなたが望むような速さで成長できなくなります。

前もって言っておきますが、業種が異なれば、必要となる従業員の数も異なります。そして私の経験は、ソフトウェアベースのビジネス、またそういった業種内の主に消費者向けインターネットプロジェクトに、完全に限られています。ですから、ソフトウェアビジネスとは別の業界で事業を営んでいる方に、この投稿がお役に立てるかどうかはわかりません。

私はこのテーマについて、ある強い偏見を持っています。それは「少ない方がいい」という考えです。私は何度も、人員の雇用を急ぎたがる起業家が失敗する姿を見てきました。そして、人員の雇用を少しばかりゆっくりと行った起業家が、成功する姿を見てきました。私が関わってきたいくつかの会社(VC)が数年にわたって行ってきた全てのベンチャー投資の成功を、じっくり時間を割いて1つの変数と関連付けるとしましょう。スタートアップの成功は、少なくとも会社作りの最初の数年間においては、雇用数の増加の緩やかさとの相関性が最も強い可能性があります。人的リソースが制限されている状態は、まだ起業したばかりの時期においては、とても良い状態である可能性があるのです。それによって、残りのビジョンは後回しにして、今どうすればうまくいくのか考えることに集中せざるを得なくなります。

私は以前にも、バーン・レートに関する投稿内で、この「従業員数」と言うテーマに取り組んだことがあります。その時に私が書いたことは、以下の通りとなります。

プロダクト構築のステージ – このステージにおいては、月間バーンレートを一月あたり50,000ドル未満に抑え続けることを、強くおすすめします。ほとんどのMVP(Minimum Viable Product)は、プロダクトマネージャーと、デザイナーと、3~4人のエンジニアのチームによって作り上げることができます。そこに賃貸料やその他の費用を算入すると、一月約50,000ドル(訳注:米国の場合。日本においては200万〜300万円程度が妥当な水準)となります。この数字をもう少し高く、例えば一月75,000ドルくらいまでに設定しているチームをいくつか見てきました。しかし、一旦その範囲に足を踏み入れると、バーンレートはこのステージにおける望ましい速度を超えて加速し始めます。

ユーザー獲得のステージ – このステージにおいては、バーンレートを一月あたり100,000ドル未満に抑え続けることをおすすめします。プロダクトリリース後のステージであり、プロダクトを繰り返し磨き上げ、さらなる顧客の獲得のための体制を整えて、新たな顧客にプロダクトを売り込むことに重点が置かれるステージです。これらのことは、プロダクト作りを行ったのと同じメンバーに、コミュニティマネージャーと数人のエンジニアを補充して、さらに、諸経費のための多少の資金を追加したチームによって、成し遂げることが可能です。

事業強化のステージ – このステージが訪れるのは、プロダクトマーケットフィットを確認した後で、そのプロダクトやサービスを中心とした、事業を強化したいと決心した時です。あなたはマネジメントチームや、収益重視チームや、数人の財務担当者を雇い始めます。会社に高い収益を、そして最終的には利益をもたらしてくれるチームに対して、投資することになる時期です。このステージにおいては、バーンレートを一月あたり250,000ドル未満に抑え続けることをおすすめします。

有用な経験則として、チームの人数と10,000ドルを掛け合わせて、バーンレートを算出することをおすすめします(訳注:米国の場合。日本はこれよりも安くなる傾向)。この数字は、従業員に払う金額ではありません。従業員1人に必要な賃貸料やその他の諸経費を含めた、「総負担」コストです。その計算式を使った上でのおすすめのチーム人数は、上記の3つの各発展ステージにおいて、5人、10人、25人となります。

つまり、プロダクト構築のステージでは5人以下、製品が市場に受け入れられるまでのステージでは10人以下、高い収益を生み出すことや、ビジネスモデルの堅牢化に取り組むステージでは25人以下となります。これは大規模な直接営業チームや、その他の多大な人件費を必要としないような、ソフトウェアベースのビジネスのための経験則です。

もちろん、上記の人数があなたのビジネスに適していない可能性も、様々な理由によって生じるでしょう。これは、単なる「経験則」でしかありません。上記の人数は、新たな従業員が必要かどうか考える上での、基準値として活用するとよいでしょう。しかし、新たな従業員が必要であるというのは、単にあなたの思い込みかもしれませんよ。もちろん、それが正しい場合もありますが。

しかし何よりも、早いステージでの雇用者数の拡大は自制しましょう。できるからと言って、行うべきであるとは限りません。チームのダイナミクスは、少人数の方が向上し、大人数では向上が厳しくなります。チームの人数が多いほど、仕事が迅速に進捗しなくなってしまいます。さらに、経営上の間接諸経費もさらに必要となります。こういったこと全てが、他社よりも早い目標達成を目指すスタートアップ企業の経営者にとって、不利に働きます。そういったわけで、雇用者は焦らず、徐々に、賢く増やしましょう。後になって、そうしておいてよかったと思えるはずです。

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