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【開発チーム・ハンドブック】(5)部下の評価など複数のパフォーマンス評価を書くためのガイド

本連載はオープンソースライセンスの1つであるGPLの元に公開されている「The Eng Team Handbook」(エンジニアチーム・ハンドブック)を翻訳したものです。開発チームが効率的に仕事するために必要な「効果的な1on1の実施方法」「開発メンバーから開発マネージャーに役割が変わるときの注意点」「パフォーマンス評価のテンプレート」「360度評価のテンプレート」などが含まれます。

著者はStripeのエンジニアであるrayleneさん。これがStripeのやり方と明示されているわけではありませんが、急成長するシリコンバレーのスタートアップにおけるエンジニアチームの取りまとめ方という意味で、日本のスタートアップでも参考にしていただけるのではないかと思います。全体を5回の連載に分けてお届けします。本記事は第5回です。

【開発チーム・ハンドブック】連載目次

複数のパフォーマンス評価を書くためのガイド

このガイドは、定期的に複数の社員からフィードバックを収集して(自分へのフィードバック、上司であるマネージャーへのフィードバック、部下であるチームメンバーへのフィードバック、同僚へのフィードバックなど)、パフォーマンス評価を行う制度がある会社での利用を前提としています。このガイドは評価期間中、複数の部下や同僚の評価を書く際に役立つでしょう。

ステップ0:評価手順を確認する

評価項目とテンプレートは「パフォーマンス評価のテンプレート」をご参照ください。

ステップ1:情報を1箇所に集約

評価に必要な情報をすべて1箇所に集めておきます。これによりそれぞれの評価やコンテンツの間を素早く行き来し、内容を改善しやすくなります。フィードバックガイド、過去の評価、プロジェクト計画、デザインドキュメント、評価対象期間中に特に重要だったプルリクエストなども評価を書く際に役立つかもしれません。

  • 評価タイプと名前でグループ分けしたチェックリストを作ります。
  • 評価のドラフトを入れるフォルダを作成します。
  • 簡単に参照できるよう、評価項目のコピーを貼り付けたドキュメントを用意します。このドキュメントは頻繁に参照し、評価を書く際の指針にします。

ステップ2:評価の大まかな枠組みを書く

評価項目を見ながら、あとで内容を書き込んでいくための見出しをドラフトに追加します。そこに思いついた内容を書き足していき、評価の大枠を作成します。ここで書くのは箇条書きや短い文章だけにしましょう。まだ内容の良し悪しは気にしなくて大丈夫です。

ステップ3:関連するフィードバックや補足資料に目を通す

評価に盛り込みたい情報を集め、慎重に目を通します。集めた情報を読みながら、先ほど作った評価の大枠にメモや箇条書きを追加していきます。ここで内容を検閲しようとしないでください。他者からのフィードバックが裏付けている要素や、揃えた情報に一貫して現れている要素に注目しましょう。他者からのフィードバックに素晴らしいコメントがあったら、誰のコメントであったかを覚えておき、ドラフトに追加します。たくさんの意見を取り入れた正当性のある評価が優れた評価です。

集めた情報の要点をすべて抽出できたと思えるまで、このステップを繰り返してください。

ステップ4:内容を編集し、改善していく

大枠が完成して少し時間を置いてから編集していきます。下記にある質問について考えながら編集しましょう。

  • 大きなテーマに自然に収まるフィードバックをいくつか書き出せましたか。そのテーマはなんでしたか。
  • 今回指摘する点について、評価対象と以前に話したことはありますか。その場合、前回の評価からフィードバックはどのように変化しましたか?
  • 引用したコメントはフィードバックの内容を裏付けるものですか。あるいはフィードバックの具体例になっていますか。そうでないなら、何かフィードバックの内容を補足する事例はありますか。
  • そのフィードバックは今回の評価で指摘するほど重要な内容ですか。1回のミスや珍しいミスではありませんでしたか。それが強みの場合、それは評価対象者の特有の能力、あるいは前回の評価からさらに良くなっている能力か考えましょう。
  • あなたが見てきた評価対象の仕事ぶりと評価で書いた内容はどのくらい一致していますか。他の人からのフィードバックに、あなたにとって新鮮な情報があるなら、その理由を考えましょう。評価対象者を取り巻く状況をより良く理解するために、もう一度集めた情報に目を通してください。
  • 今回共有するフィードバックに基づいて今後評価対象者がどうすべきか、具体的なアイデアはありますか。評価対象者が次の評価サイクルで、より良く成長できるためにあなたが手伝えることはありますか。

1つの評価項目で取り上げるテーマやキーメッセージは3つから5つに絞ります。それぞれあなたや他の人からのフィードバックの内容と一貫していて、その内容を裏付ける具体例があるか確認しましょう。フィードバックに基づいて、今後の対策に関する具体的なアイデアも入れてください。こうした内容が含まれていない評価は、ありきたりであまり役に立たない内容になってしまうでしょう。また、より効果的なフィードバックを提供するのに役立つフレームワークを参考にするのも良いと思います(例:SBI型フィードバック)。

ステップ5:文章化

ここまでまとめた内容を文章にします。文章にしない段落があっても構いません(例えば、3つから5つの主要テーマは箇条書きのままにするなど)。箇条書きはさっと読んで理解するのに便利ですが、それぞれのテーマがどのように関連するかなど、全体の内容を伝えるのは文章の方が良いでしょう。ただし、評価は短編小説ではないので、流れるような文章を書く必要はありません。読む人のことを考え、フィードバックの主旨が明確に伝わるよう心がけましょう。ただし、言葉を柔らかくしすぎたり、必要のない内容を盛り込みすぎたり、具体例や詳細を省略したりしないでください。重要なメッセージが伝わらなかったり、無視されてしまったりしてしまいます。

ステップ6:校正と仕上げ

最後にもう一度フィードバックを読み、内容がきちんと自分の考えを表しているか確めます。あとは送信して完了です。

効率化のコツ:ステップを行き来する

評価を効率的に書くコツは、各ステップの順番を工夫することです。複数ある評価対象者のドラフトを行ったり来たりすると、箇条書きを文章化しやすくなります。

 

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Editorial Team / 編集部

Coral Capital

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