この度、Coral Capitalの3号ファンドをファースト&ファイナルクローズしたことをご報告いたします。みずほ銀行や三菱地所、新生銀行、Pavilion Capital、米Founders Fund、第一生命保険、グリー、非公開の国内および海外機関投資家を含むLP投資家の皆様の多大なるご協力のおかげで、140億円のファンドを組成できました。また、これにより、Coralが運用するファンド総額(AUM)は約300億円となります。
この新しい3号ファンドを通して、私たちはこれからもシードやアーリーステージの有望な日本のスタートアップに投資し続けます。ただし、今回のファンドには、これまでとは違う以下の2つの特徴があります。
より大型のシード投資、さらに大きな追加投資
3号ファンドでは5,000万円から最大5億円の初回投資を行います。シードやアーリーステージへの投資としては、国内最大規模の金額で投資を実行できるようになるということです。また、追加投資用にもかなり多くのファンド資金を割り当てています。過去にも、私たちは特に有望な投資先に対して大型の追加投資を何度か行っていて、SmartHRには累計約20億円、Grafferには累計約17億円を最終的に投資しています。そして今回の新しいファンドでも、強い確信を持てた企業に対して同様に大きく追加投資していく予定です。
より長い運用期間
今回のファンドは、じっくりと運用する前提で立ち上げました。歴史に残るような企業を成長させるのには時間がかかりますが、Coralは企業の成長に寄り添って支援していく予定です。3号ファンドの運用期間は最長14年まで延長できるため、起業家はVCから早期のイグジットをせかされるプレッシャーなく事業を成長させることに専念できます。
私が共同創業パートナーのYoheiとともにスタートアップ業界に入った2012年当時は、日本のスタートアップ・エコシステムは今とはまるで違っていました。スタートアップに対する投資額は年間1,000億円にも満たず、ユニコーンもほとんど存在しませんでした。起業して企業を成長させるためのノウハウや知見についても、日本語では情報をほとんど得ることができず、スタートアップ業界はブラックボックスのようでした。
変革が必要だと気づいた私たちは、シリコンバレーのファームである500 Startupsと共同で1号ファンドを立ち上げました。それ以来、日本のエコシステムの成長に必要だと思われる様々なベストプラクティスを海外から取り入れ、日本で共有しようと努力してきました。実際、コンバーティバル・エクイティ(J-KISS)や、国内初のスタートアップ向けのSPVなど、多くの新しいコンセプトをCoralが日本で最初に導入しています。他にも、スタートアップのベストプラクティスや、最新の科学やテクノロジーのトレンドについて情報を発信することで、スタートアップ業界の「ブラックボックス」を解消してきました。
最近では、スタートアップ業界の状況も大きく改善してきました。スタートアップに対する年間投資額はおよそ5,000億円にまで増加しました。ユニコーンも6社に増え、Coralの投資先もその1つです。多くのスタートアップ起業家や社員、投資家が自らの経験談や知見などを発信するようになり、エコシステム全体のレベルが上がってきています。日本も、よりシリコンバレーのようになりつつあります。
とはいえ、日本の経済規模を考えると、まだまだ成長や改善の余地があると言えるでしょう。毎年スタートアップに5,000億円が投資されていると言っても、米国や中国の十数兆円規模の投資に比べるとまだ圧倒的に少ない状況です。GDPが日本の3分の1ほどしかないお隣りの韓国でも、約4,000億円の投資を集めていて、Coupangというデカコーン企業も生まれています。日本はもっと上を目指せるはずですし、必ず実現します。
Coralも、過去5年間においてそうであったように、日本のエコシステムの成長に引き続き大きく貢献し続ける所存です。
この新しいフェーズの中で、私たちは以下に述べる「知見・人材&コミュニティー・資金」 の3つのポイントに注力していきます。
知見
弊社メディアのCoral Insightsの情報発信量を倍増するため、Satoru Masudaを新しく副編集長として採用しました。BuzzFeedやTechCrunch Japanでの勤務経験を活かし、編集長のKenとともに日本のスタートアップ・コミュニティに情報やインスピレーションを提供していきます。
人材&コミュニティー
元パーソルのYohei Shirataが、エグゼクティブ・リクルーティングの担当者として加わることになりました。Ryo Tsudaとともに、投資先企業に限らず、スタートアップ業界全体に有望な人材を呼び込んでいく予定です。また、公式発表は数か月後になりますが、コミュニティ・ビルディングを率いる人材として、新しいメンバーが1名内定しています。これらの取り組みにより、スタートアップを大きく成長させるのに最も重要な要素である「優れた人材」の確保に注力していきます。
資金
メガベンチャーを増やすには、より多くの資金が必要になります。国内でアクセスできる資金には限りがあるので、Coralでは海外投資家との独自のネットワークを活用して投資先の資金調達をサポートしていきます。実際、今回の新しいファンドの資金も、その約3割がFounders Fundを含む米国やアジア、欧州などの海外投資家からの出資によるものです。投資先企業が成長し、より大きな野心を追求するようになった際にも、こうした海外投資家から協力を仰いで支援を継続します。
日本のエコシステムで、より野心的な目標を持つ人が増え、才能ある人材が集まり、より多くの資金にアクセスできるようになれば、日本でもユニコーンどころかデカコーンが生まれるポテンシャルがあると私たちは確信しています。経済全体があらゆる分野でデジタル・トランスフォメーションに向けて動き始める中、スタートアップはその「波」に乗るのに最も適したポジションにいます。さらに、日本には多くの優れた技術者や科学者がいるので、条件や環境さえ整えば、グローバルレベルの企業を作ることも十分に可能なはずです。今後もCoralはエコシステムの成長を牽引し、より良い未来を作ろうと取り組む勇気ある起業家たちの活躍に少しでも貢献したいと考えています。
Founding Partner & CEO @ Coral Capital