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スタートアップの売却における主要な問題 ⑺買収価格

本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」のMBA Mondaysというシリーズの投稿を翻訳したものです。今回は第8回目としてスタートアップのM&Aを取り巻く、主要な問題の一つ「買収価格(原文)」についてご紹介します。また、記事公開にあたり、プルータス・マネジメントアドバイザリーに日本での実務の観点からコメントいただいています。

これまでの記事は下記よりご覧いただけます。


もちろん買収価格はM&A取引で最も重要な点です。企業買収のオファーを受けるかどうか決めるときは、これまでに論じたすべての点を考慮する必要があります。ですが結局のところ大きな問題は価格です。

M&A取引で高値がつく最善の方法は競争プロセスを設けることです。真剣な入札者が複数いれば、そうでない場合と比べて買い手はより積極的な値付けをせざるを得ません。

ですが、たいていの買い手はオークションに参加したがりません。大々的にオークションを行うことは、潜在的な買い手、もしかすると最高の買い手を逃すことになりかねません。ですからこれには注意が必要です。私が気に入っている方法は、まず一社からビッドをもらい、その後もう一社からひそかにビッドを得るというものです。そうすれば不意に競争プロセスが生まれます。みんなに「オークションを行います」と告知してプロセスを開始するのは私は好きではありません。

時には、競争なしで契約を獲得したいという思惑から初期に積極的なビッドを提示してM&Aプロセスを回避しようとする買い手から最良の価格がつくこともあるでしょう。そのようなオファーには真剣に耳を傾けることです。私はこれまで、先行して提示されたビッドが、競争プロセスの中で最も高いビッドとなった事例を見てきました。

先行オファーの問題は、もし競争プロセスを経た場合に実際にどれだけの価格がつくのかがよく分からないことです。そのため先行オファーは、オークションプロセスを回避することと、先行オファーをした買い手と契約することを動機づけるようなプレミアムが、あなたが適正だと思う価格に上乗せされている必要があります。

M&Aプロセスには目標価格を決めて臨むべきです。目標価格はある種の論理と論理的根拠に基づいたものである必要があります。M&Aアドバイザーがそれを助けてくれます。これはM&AプロセスにM&Aアドバイザーを加える最大の理由の一つです。ですが、この見積もり作業を行うのにM&Aアドバイザーは必要ありません。ベンチャーキャピタルがいるなら彼らが助けてくれます。または経験豊富なCFOが率いる優秀な財務チームがあれば自社で行うことができます。

私は通常、数年、せいぜい3年を見渡して、もし買収されず独立したままであった場合に会社の価値はどれくらいになるか、キャッシュフローマルチプル、売上マルチプル、または確立されたLTVを持つアクティブユーザー数のマルチプルなどに基づいて算出します。それが目標価格になります。買い手は、買収される企業に対して将来の潜在的価値の放棄を求めることになるので、企業の現在価値に上乗せしてプレミアムを支払う必要があるはずだというのが、私がこの方法を用いる論理的根拠です。ですが、買収されずに独立したままだった場合に得られたかもしれない利点のすべてを今、支払うよう求めることはできません。妥当な提案は、数年後までの将来価値でしょう。その将来価値が誰にとっても、とりわけ買い手にとって十分明らかである場合は特にです。

プロセスを経ても目標価格以上の値がつかなかった場合、行き詰まった状況でないかぎり、独立したままでいるべきです。M&Aプロセスを経て結局何も成果が出ずに終わるのは経営陣にとっても会社全体にとってもつらいことではありますが、適正でないと思う価格を受け入れるというもう一方の選択肢はさらにひどいものです。私は多くの企業がM&Aプロセスを経ても、ろくなオファーがなく、結局ビジネスに戻って価値を生み出し続け、数年後にずっといいM&Aにたどりついたのを見てきました。最初の半年ほどはきついですが、その後は誰もが気持ちを切り替え、失敗に終わったプロセスは遠い過去の記憶となります。

買い手が目標価格以上を提示した場合、オファーについて真剣に考慮しましょう。会社を売ろうと決意し、プロセスを経て目標価格に達したら、その取引を断る前にじっくり慎重に考える必要があります。ですが売却するつもりがなかったのに買収を持ちかけられた場合、話は別です。私は多くの起業家が売却後に後悔しているのを見てきました。高値に負けて受け入れる用意のできていない売却をしてはいけません。

まとめると、会社を売却する時には、あなた自身、幹部たち、投資家が納得し、対象とする買い手たちも納得する目標価格を導き出す事前の作業をしましょう。それから最高の価格を獲得するために、複数の買い手を交渉に参加させる手立てを見つけ出します。そしてこれらすべてを行う前に本当に自分は会社を売りたいのか確認しましょう。自分の会社に高値をつけてもらうのは簡単なことではないので、それに成功した時は気持ちよく契約にイエスと言えるほうがいいでしょうから。

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Editorial Team / 編集部

Coral Capital

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