本ブログはニューヨークのベンチャーキャピタルUnion Square Venturesでパートナーを務める、Fred Wilson(フレッド・ウィルソン)氏のブログ「AVC」のMBA Mondaysというシリーズの投稿を翻訳したものです。今回はこれまで数週に渡ってご紹介してきた、人材に関するシリーズ第4弾「採用業務の最適化(原文:Best Hiring Practices)」についてご紹介します。
これまでのコンテンツは下記よりご覧いただけます。
- 第1弾:「カルチャーフィットとは」
- 第2弾:「優秀な人材を見つける方法」
- 第3弾:「会社のステージ別の最適な従業員数」
採用とはプロセスであり、そのように認識すべきです。これは非常に重要なことです。
まずはじめに、職種別の継時的な採用計画を示す、採用ロードマップを作リましょう。これを事業計画や予算に組み込むべきです。限られた資金をどう採用に投資するのかについては、非常に戦略的であるべきですし、いつ調達し資金を追加すべきかは慎重に考慮される必要があります。
それが済んだら、それらのポジションの採用活動を開始するためのシステムを構築しましょう。これを軽んじてはいけません。なぜなら、ポジションごとの採用それぞれで、複数の人員のかなりの労力を要するからです。採用プロセスを簡単に開始してはいけません。
あるポジションの採用を始める際の最初のステップは、それがどんなポジションであるかを明確にすることです。ほとんどの会社はこれをポジションの募集要項(スペシフィケーション/スペック)と呼んでいます。募集要項とは、果たされるべき役割とその仕事で活躍する人物の特徴を説明するものです。Twitterのニューヨークオフィスにおける、ブランドストラテジストのポジションの募集要項を見てみると、Twitterという大きな組織を背景にした高次のレベルでの役割の描写から始まります。その後、そのポジションで活躍するのに必要な資質の記述があります。そして、具体的な職務についての概要があり、その後、Twitterが求める候補者の経歴や経験についての記述で終わっています。
この募集要項は、採用予定のポジションに直接責任を持つ立場の者が草稿し、CEOや人事の責任者(小さな会社の場合はCEO)が承認して署名するべきです。この募集要項が採用ページで公開されると、このポジションは正式に採用開始となり、そのプロセスが開始します。
会社のホームページには、採用ページが備えられておくべきです。仮に5人のスタートアップだとしても、採用ページは必要です。その会社で働くのはどのようなものなのかを明確に示し、求人情報を掲載すべきです。ホームページの一番下、会社概要のすぐ右にリンクを張るべきでしょう。これは重要なことですので、先延ばししてはいけません。これはEtsyの 「キャリアページ」です。採用ページでどんなことを記載すればよいかのよい模範となっています。
求人情報を自社の求人ページに乗せ、採用の過程で候補者を追跡し、採用チームに業務の流れを提供する、ウェブを基盤としたソリューションがあります。こうしたシステムは、業界用語で採用管理システム(ATS)と呼ばれています。私たちの投資先企業の多くはJobviteを採用しています。しかし、世の中にはそれ以外の選択肢も多数あります。自社で独自にこれを構築する必要はありません。
求人を公開したら、始まったばかりのそのプロセスに勢いをつけることが大切です。前々回の投稿で、どこで優れた人材を探し出すかについてお伝えしました。「求人情報を公開し、候補者が来るのを待つ」方法はやめましょう。その方法では最高の人材を獲得することはできないでしょう。自らが動き、採用したいと思う才能ある人材を見つけ出さなければいけません。既存の採用チームを使うこともできます。多くの場合、それが常に良い結果を産みます。人脈を使うこともできます。成功報酬型と定額型両方のリクルーターを利用したり、LinkedInやIndeedのようなサービスを利用することもできます。出来る限り最高の候補者を調達するために、広い範囲で探し、できる限りのことをしましょう。ここが、力を尽くすべき段階です。多くの会社はこのプロセスの促進に採用担当者を雇います。特に、エンジニアやデザイナー、その他のプロダクト開発に携わる人材を雇う際にその傾向にあります。従業員が10人のみの小さな会社でも採用担当者を招き入れる会社を見てきました。よりよい人材は結果的に利益を生むので、そのような投資をすることが私は大好きです。
候補者が来始めると、だれが面接を受け、だれが面接には至らないのかを決めるため、吟味する必要があるでしょう。社内のだれかがこのプロセスを主導する必要があります。人事部があれば、彼らがこれを精査し始めるでしょうが、このポジションを採用する責任者も直接この精査に取り組まなければならないでしょう。人事のプロはそのポジションの要件にはまったくあてはまらない候補者を見抜き、候補者を絞り込むことができます。しかし、同時に、人事責任者は、選考が進む可能性がある全ての候補者の応募書類に目を通して検討すべきです。採用の責任者はそのポジションに何が求められているかを一番分かっていますし、直感的な判断を下すことができます。彼らの直感的な判断が最適な候補者へと導くことが多いです。
すべてのポジションでかなりの数の人を面接したいと思うでしょう。これには断固としたルールはありませんが、より多くの人と会えば会うほど、採用が上手になるでしょう。もちろん、全ての人に会うことはできません。多くの会社は面接に入る最初の関門として15分の電話での会話(電話面接)を好みます。skypeでのビデオ電話もこれと同様に良い方法です。USVでは、ビデオアプリで実験をし、いい結果を得ました(Take The Interviewというサービスを使いました)。電話やビデオでの事前面接は、実際に会って面接をしたいと思う小さなグループ(6名から12名)に絞り込む効果的な方法です。
対面で面接を行う段階まできたら、どのようにして社内のできるだけ多くの人間を候補者に会わせるかを考えます。私たちの投資先企業であるReturn Pathでは、面接の過程で1名の候補者が4名から8名の社員と会います。数が多いですが、Return Pathはチーム、風土、そして社員に大きな投資をしていますし、そこに価値があると感じています。あなたの会社にとっても大切なことかもしれません。
多くの社員は面接のやり方を知りません。面接から学ぶためにも、彼らに何を見るべきかを教育するだけでなく、基本も教えるべきです。面接に関するトレーニングや、面接官が面接評価を記入する仕組みを作ることで、面接プロセスにより一貫性と明確性を持たせることができます。
私の知っているCEOたちのほとんどは、社員が100名(またはそれ以上)になるまで、会社が雇う人物全てを面接します。あなたが人事部の責任者や一流の採用チームを有していても、採用の責任はあなたにあります。いやあなただけにあると言った方がよいでしょう。うまくいかなかった採用はあなたの責任です。うまくいった採用はあなたの成果です。ですから、会社が自分たちで採用できるほど大きく強く成長するまでは、最終的な判断をする責任から逃れてはいけません。こうして素晴らしいチーム、風土、会社を作り上げていくのです。
思い描いた候補者が確定したら、その人物を調べたいと思うでしょう。私は全ての共通の知人に、リファレンスを取ることが好きです。それはそんなに難しくはありませんし、他のどんな身辺調査会社よりも多くのことを学べます。特に、LinkedInはこれがうまいです。その候補者をLinkedInで照会すると、あなたの知り合いの中でだれがその候補者を知っているかが分かります。その人たちに電話をし、照会しましょう。犯罪者や市民情報の簡単な身辺調査をすることはかなり簡単です。USVではそれはしませんが、企業のよい慣習としてそれを行っている会社を私はたくさん知っています。
採用をする準備ができたら、内定通知を用意する必要があります。内定通知には、提示する報酬や雇用に関する他の主な条項を概説します。最初に送る内定通知の草稿で弁護士の力を借り、それを将来の雇用に利用する定型書式としましょう。内定通知はあなたと社員との間で結ばれる書面での同意書であり、そのように扱いましょう。採用通知に署名し、それを承諾し承認するための署名を社員からもらいましょう。
以上が採用のプロセスです。正しい方法を示しましたが、どのポジションの採用においても大きな投資を伴います。ですから、多くのスタートアップ会社は、単にそれをする時間や資金が十分にあるわけではないので、そこで手を抜いてしまいます。皆さんには一歩引いて、採用プロセスを正しくしなかったときにかかるコストを考え、それを正しく行うことに最大限の努力をするように勧めたいと思います。やがて採用プロセスをきちんと行うことのメリットと、その大きさが見えてくるでしょう。
Editorial Team / 編集部